
新しいマンションに越してきて、1年が過ぎようとしている。そういえば、引っ越しの時も今みたいに下の公園に桜が咲いていたっけ。越してきた頃を思い出すと、ずいぶん昔のことのように感じる。
夕飯の支度をしている時に、ふと、切子教室に通っている友だちが新築祝いに贈ってくれた切子のロックグラスが目に止まった。なんだかんだと忙しく、すっかり忘れてしまっていた。もらったロックグラスは彼女が習っている先生の作品で、天満切子というらしい。手に取るとずっしりとした重みがあり、なめらかな彫りに素人目ながら熟練の技を感じる。
友だちが「棚に置きっぱなしにしないで、ダンナさんと使ってね。うちの先生が『天満切子は見て美しいだけじゃなくて、実際に使った時にグラスの中に映る美しさも楽しめる』っていつもおっしゃってるのよ」と話していたのを思い出す。
そうだ、今日の夜はこのロックグラスで晩酌をしよう。
わくわくしながら焼酎を取り出す。新聞を読んでいた夫が、いつもと違う雰囲気に気づいて不思議そうな顔をした。
「何かいいことあった?」と聞く夫。「引っ越しの1周年記念をしない?」というと、「いいね」と乗ってきた。
焼酎を注ぐと、底の放射状のカットがグラスの中で反射して、まるで万華鏡のように煌めく。
乾杯
「なんだかこういうの、楽しいわね」「家で飲むのを増やそうかな」
いつもの焼酎なのに、グラスを替えると上等のお酒を飲んでいる気分になる。
おいしいお酒と春の料理にふたりで舌鼓を打ちながら、天満切子がくれた贅沢な時間に感謝した。来年も2周年をこうして祝えますようにと願いながら。
●切子工房RAU
大阪市北区同心1-11-8 TEL.06-6357-9362
※宇良さんの作品は工房で購入できます。事前に電話予約が必要です。

