阪急電車宝塚線「山本」駅から高台に広がる静かな住宅地、山本山手地区。その麓から線路を越えて南側に続く一帯は、安行(埼玉県)、田主丸(福岡県)と並ぶ大園芸ゾーン。中でも山本は平安時代から花の栽培が始まったという由緒ある歴史を誇っている。
山本の大きなターニングポイントとなったのは、接ぎ木の技術をあみ出し、豊臣秀吉からその称号を賜った「木接太夫」の登場による。勢いのある台木に接ぎ木をすることで、花木は豊かに果実は大きく美味に育つ。世界に先駆けた大発明であった。花木を好んだ秀吉に引き立てられ、地元山本も大いに発展した。
千利休が茶花を求め、俳人蕪村が訪れて一句詠み、やがて明治時代には1900年のパリ万博に山本から出展された接ぎ木のボタンが、その華麗さで人々の目を奪ったという。
バラをはじめ海外からの草花や樹木は、まず山本で日本の風土に根付かせ、各地へと広まった。ユニークなのは明治中頃からカタログ販売が取り入れられてきたことだ。戦前には部数500万部を超え、海外にも及んだ。
山本台にある「陽春園」を訪ねてみた。創業が明治20年という老舗で、広大な敷地は草花の苗、コニファー、樹木や果樹などコーナー分けされ、モデル庭園もあっていつも賑わっている。
造園では、最近はマンションのベランダや専用庭、ルーフガーデンの依頼も多いという。ベランダで育てるときの心得は?と尋ねると、まずスタッフに相談してください、と返ってきた。地形やベランダの向きで日照の入り方が違い、風の影響もある。身近にプロがいる安心と信頼感は園芸好きには何物にも代えがたい喜びだ。
 
ファミリーガーデン「陽春園」
大きなメタセコイヤが目印。
スタッフの皆さんも親切です。
山本台1-6-33
TEL:0797-88-2112
http://www.yoshunen.co.jp/
最明寺川
駅のすぐ西側を流れる。上流には、鎌倉幕府執権北条時頼が出家後に愛でた最明寺滝がある。
 
木接太夫の碑
大正元年の建立。現在は山本駅の北西に。
菅屋(すがや)
名物は金覆輪(きんぷくりん)。
金箔が風格を添える、栗の風味豊かな創作和菓子です。
山本駅南出口から徒歩1分。 TEL:0797-89-0980
http://www.sugaya-web.com
明治初期からの歴史と伝統がある山本のバラ栽培は、愛好家が急増した昭和初期には全国の生産高の80%以上を占めたという。
そんな伝統を偲ばせる、小さなバラのナーセリー(生産者)がある。素敵なご夫婦が手作りで経営し、全国のオールドローズファンを魅了してやまない「ニューローズ」阪上勘右衛門商会だ。
一年に一時期しかない5月から6月のオールドローズの開花期には、北海道や九州、関東からも、お目当ての花に逢うために、この小さなバラの聖地へ大勢の人が訪れる。「『この子にもう一度、逢いたくて』と、それはもう恋心というか、肉親の愛情というか、皆さん、いたたまれずにお越しになるという感じなんですよ」お客は圧倒的に女性が多い。この時期は園内がバラの香りとエレガントな色、そしてため息で満たされる。
今、世界中には4万種ともそれ以上あるともいわれるバラは、競馬馬のサラブレッド同様、系譜が明確に記録されている。それをたどると8種類の原種のバラへと行き着くそうだ。現在の大半のバラは、1867年に第1号が誕生した四季咲き性のハイブリッドローズ(モダンローズ)だが、こちらの「ニューローズ」の専門はそれ以前のオールドローズ。
モダンローズが日ざしを浴びてまばゆく映えるのに比べて、オールドローズは中間色が多く、花もうつむきがちで派手さはないが、心を癒してくれる。女性の心身と美容に及ぼす力は「エリクシール」と讃えられる。
それは中世のヨーロッパで、錬金術がめざした不老不死・永遠の生命を叶える万能薬のことだ。
「ニューローズ」では、自家で育てたバラ苗を、先駆けとして作り続けてきたハーブ類と共に通信販売している。
バラの花を撮るのは難しい。一年間育てて、美しい時期は一瞬といっても過言ではないほど短い。
奥様、ときにはお嬢さんが撮影係で、手作りのカタログを発行している。そのカタログには、毎年10〜20種が新たに英国から輸入されデビューする。
しかし、輸入した苗をそのまま販売するのではない。日本の風土にたくましく根付くように、野イバラに接ぎ木をして育て、増やす。ここにも山本発祥の接ぎ木の技術が生きている。カニ殻のキトサンや木酢液、堆肥の有用微生物の力を借りて減農薬に努めて育てたバラの苗を送るときは、わが娘を嫁に出すような心境だそう。宅配便で送るから
「本当の箱入り娘ですよ」とご夫婦は笑う。
山本やお隣の阪急中山駅そばにも、ナチュラルな雰囲気がすてきな薬局「チトセファーマシー」があります。
本店は小林にあり、こちらが地域の人々の健康づくりを願ってプロデュースするカフェやショップが人気を集めています。その最初にできたお店がJR中山寺駅の近くにある
「C ガーデンカフェ」中山店。人間が本来持っている自然治癒力を高めるように、専属の栄養士さんにより考えられたメニューが用意され、さまざまな花のはちみつやちょっと珍しいフレーバールイボスティー、薬膳菓子などのショッピングも楽しめる。
山本駅前から市街地を背に車を走らせると、山手台を経て、道は自然に中山五月台へと続く。そこから長尾山トンネルをくぐると、切畑を経て、境野に至る。
ここは神戸市北区と三田市、猪名川町に囲まれた宝塚市の最北端エリアだ。のどかな農村風景が続く「え、こんなところに?」という一角に、日本中からガーデン好きが訪れる「植花夢」がある。
1万2千坪にも及ぶ低い山地に、5つの池を生かしたいくつものテーマの異なる庭園が隠れている。歩いて回るのにざっと1時間半はかかる。ここは、その主、若生真理さんが15年前に土地を買い、思い通りに木や草花を植えて育ててきた花と緑の見本園であり一大研究所なのだ。
「植花夢」の風景を眺めると、さまざまな木や草に存在感があって、しかも庭にありがちな作り物くささが微塵もない。そこに豊かな自然があるのだ。ところがよく見ると、その木や草の葉の色が実に多彩なことに気づく。
緑の濃淡、黄味や赤味。艶やかたち。濃淡が美しい斑入りの植物も多い。そんな表情の違う緑がまるで画家の色使いやタッチのように、繊細な計算で組み合わされている。
ここは、山本で花や木の美を追究し、かつては花博、テレビの園芸番組と活躍され、海外の園芸にもくわしい主が、本当に作りたかった庭園の集大成なのだ。そこに足を踏み入れることのできる幸せをそっと噛みしめる。
 
ニューローズ(阪上勘右衛門商会)
外観は瀟洒な普通のお家。塀に浮かぶニューローズの書体は、先々代が考案したもの。震災で建て替えた家が多い線路南側のこの一帯で、歴史を告げている。
山本東2-3-19 TEL:0797-88-0147
※バラのリストの請求は200円切手を同封し住所・氏名を明記の上、上記宛先へ。(〒665-0881)
あいあいパーク
震災復興と地域の活性化を願い、地元の園芸業者さんが力を合わせ第三セクター方式で誕生した花と緑の情報発信ステーション。イギリスの美しい地方都市サリーのたたずまいを再現。旧国道176号線の両側に、ガーデニングショップやカフェ、レストランと庭園があり、園芸相談や教室もひらかれている。
山本東2-2-1 TEL:0797-82-3570
C's ガーデンカフェ中山店
健康を考えてダイエットできる週替わりのランチ
<C's コース>は、食前酢、前菜、根菜スープ、ハーフパスタ、メイン料理、はちみつヨーグルト、ドリンク、デザートがついて650kcal以下・2,200円。
中筋5-15-1 TEL:0797-82-1118
植花夢
突然変異による斑入りは、神のみが創り出せるもの。その中から園芸家が10年、20年育てて生き残れたものだけが種として定着する。こちらにはそんな珍しい植物も素顔で育っている。
境野横道山1-1 TEL:0797-91-0398
アルテニシア・アルボレッテンス・ポーエという白い葉のイタリアのヨモギ。お湯を注ぐと鮮やかな緑に変わり、リキュールを思わせる目の覚めるような香りがした。
※2006年7月取材
ジオシリーズマンションに関するお問い合わせはジオラブ梅田まで 0120-8923-01 受付時間:午前10時〜午後6時(水曜・木曜定休)